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「Quand le mal est fait」
著者 : Nan Aurousseau
出版社 : Stock
本の種類 : ソフトカバー(14x2x22)
ページ数 : 235頁
Proxo 社のビルの44番事務所へ、鍵を受け取りに来た、Marcel Tous は、アルコールを摂取し過ぎた為か、迷路の様な、ビルの地下で、迷子になってしまう。 「くそう、もう絶対酒なんか飲まない」と、罵りながら、なんとか、この地下から、抜け出そうとする Marcel Tous の姿と、彼の若い妻 Brigitte と、彼らの別荘の近くに住んでいる作家の Bob の姿が交差する迫真の小説。
おしまいのページまで読み終わって、頭に浮かんだのは、
「Un bouquin HORRIBLEMENT bien écrit」という言葉。
そして、この本についてのレヴューを書こうとして、感じるのは、この本を読むときの楽しみを殺ぐなわずに、本書の魅力を説明することの難しさ。
主人公が、迷路の様なビルの地下で、迷子になり、理不尽にも、かなりグロテスクな拷問を受ける下りに、気分が悪くなり、読むのを中断しようと思いましたが、事の顛末を知らないままだったら、もっと後気味の悪い思いをするような気がしたので、なんとか、読み続ける事ができましたが、読み終えてから、最後まで読んでよかった、と思った秀作です。
定年退職した夫と、20歳も年下の若い妻のすれ違いや、思い違いに、隣人の男の妄想が重なり、狂気へ向かってゆく様と、人間の内の葛藤を迫力タップリに表現した、読み方によっては、ホラー小説、ファンタスティック小説、心理小説、サスペンス小説、とも取れる、ジャンル付けの難しい作品。 グロテスクな下りやエロチックなシーンに事欠かず、すらすら読めてしまうという、エンタメ小説の様な殻をかぶっているけれど、その中には、軽く読み流すこと事の出来ない、人間に対する鋭い洞察を伺うことが出来ます。
本書は、長い間配管工として働く傍ら、小説を書き溜め、54歳の時に出版した「Bleu de chauffe」で、一気に有名になったNan Aurousseau 氏の手による「Bleu de chauffe」、「Le ciel sur la tête」、「Du même auteur」に続く、最新作(2010年11月現在)なのですが、この人程、作品を書くたびに、作品の完成度が高くなってゆく作家には、いままでお目にかかった事がありません。
50歳を過ぎても、これ程、進化する事ができるとは!
『50は不惑』、なんていう言葉が、裸足で逃げ出すような、勢い良く成長してゆく若々しさには、驚かされると同時に、意気をかき立てられます。
構成の巧みさで、ページから気迫がほとばしる、良く出来た小説なのですが、かなりグロテスクな下りがあるので、その手の描写が苦手な方は、ご注意を。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
【外部リンク】
2013年5月7日レイアウト修正。
著者 : Nan Aurousseau
出版社 : Stock
本の種類 : ソフトカバー(14x2x22)
ページ数 : 235頁
Proxo 社のビルの44番事務所へ、鍵を受け取りに来た、Marcel Tous は、アルコールを摂取し過ぎた為か、迷路の様な、ビルの地下で、迷子になってしまう。 「くそう、もう絶対酒なんか飲まない」と、罵りながら、なんとか、この地下から、抜け出そうとする Marcel Tous の姿と、彼の若い妻 Brigitte と、彼らの別荘の近くに住んでいる作家の Bob の姿が交差する迫真の小説。
おしまいのページまで読み終わって、頭に浮かんだのは、
「Un bouquin HORRIBLEMENT bien écrit」という言葉。
そして、この本についてのレヴューを書こうとして、感じるのは、この本を読むときの楽しみを殺ぐなわずに、本書の魅力を説明することの難しさ。
主人公が、迷路の様なビルの地下で、迷子になり、理不尽にも、かなりグロテスクな拷問を受ける下りに、気分が悪くなり、読むのを中断しようと思いましたが、事の顛末を知らないままだったら、もっと後気味の悪い思いをするような気がしたので、なんとか、読み続ける事ができましたが、読み終えてから、最後まで読んでよかった、と思った秀作です。
定年退職した夫と、20歳も年下の若い妻のすれ違いや、思い違いに、隣人の男の妄想が重なり、狂気へ向かってゆく様と、人間の内の葛藤を迫力タップリに表現した、読み方によっては、ホラー小説、ファンタスティック小説、心理小説、サスペンス小説、とも取れる、ジャンル付けの難しい作品。 グロテスクな下りやエロチックなシーンに事欠かず、すらすら読めてしまうという、エンタメ小説の様な殻をかぶっているけれど、その中には、軽く読み流すこと事の出来ない、人間に対する鋭い洞察を伺うことが出来ます。
本書は、長い間配管工として働く傍ら、小説を書き溜め、54歳の時に出版した「Bleu de chauffe」で、一気に有名になったNan Aurousseau 氏の手による「Bleu de chauffe」、「Le ciel sur la tête」、「Du même auteur」に続く、最新作(2010年11月現在)なのですが、この人程、作品を書くたびに、作品の完成度が高くなってゆく作家には、いままでお目にかかった事がありません。
50歳を過ぎても、これ程、進化する事ができるとは!
『50は不惑』、なんていう言葉が、裸足で逃げ出すような、勢い良く成長してゆく若々しさには、驚かされると同時に、意気をかき立てられます。
構成の巧みさで、ページから気迫がほとばしる、良く出来た小説なのですが、かなりグロテスクな下りがあるので、その手の描写が苦手な方は、ご注意を。
【こんな人にお勧め】
人間が描けている、迫力タップリで、独創的なホラー・ヴァイオレンス小説を読みたい方。 50過ぎたら人生終わりと、諦めムードの方。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 4/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
【外部リンク】
2013年5月7日レイアウト修正。
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