♥ Coup de coeur ♥
「La quatrième plaie」
著者 : Patrick Bard
「La quatrième plaie」
著者 : Patrick Bard
出版社 : Fleuve Noir
本の種類 : ソフトカバー(14x2x22)
ページ数 : 240頁
主人公の Abe こと、 Ablaram Van Tang は、ラオスで、ラオス人の母親とアメリカ空軍のユダヤ系軍人との間に生まれた。
父親は戦死し、Abe が5歳の時、彼を背負った母親が、アメリカ軍の置き土産の地雷を踏んで死亡した。 Abe は、運良く命を免れたれたが、地雷のせいで右手の親指と人差し指を失った。
その後、Abe は、タイの難民キャンプから、フランス領ギニアへ渡り、そこで、頭の良さを見込まれ、奨学金を受け学業を続け、医者になり、現在は、GSF(Gnérir Sans Frontièrs)という非営利団体のメンバーとして働いている。
Abe は、Ouganda で、行方不明になった医師の捜索のため、Ouganda にやって来る。 ところが、Abe は、Ouganda のGSF支部で働いているスタッフから、逆に、現在アフリカで多くの死者を出している「眠り病」に効く 『rostine』 という薬を積んだまま行方を絶ったトラックを探してくれと、頼まれる。
フランスの薬品会社は、採算が合わないという理由から、 アフリカに蔓延する「眠り病」という病を唯一治療することの出来る『rostine』 の生産を打ち切ることに決定したため、この病に罹っている人々を救うためには、どうしても、この薬品を入手しなければならなかったのだ。
パリのGSFのスタッフ Joséphine は、『rostine』 の採算を再開させようと、製薬会社に働きかけるが、企業幹部は、生産の再開をかたくなに拒否する。
やがて、ゲリラの襲撃にあい、ぼろぼろになったトラックが見つかる。
GSFが、『rostine』 を見つけたものに、千ドル賞金を出すことを発表すると、トラック運転手達の首と ronitine が入ったダンボールが、10万ドルの身代金を請求する手紙と共にGSFの事務所へ届けられる。
ちびで、片手の指が半分ないけれど、妙に女心をくすぐる、アジア人と白人のハーフの主人公を中心に、
子供の養育権を元夫に取られた、世界を駆け巡るバリバリのキャリアウーマンの Joséphine、
両親を目の前で惨殺したゲリラの一員となる事を強制され、生き残るために、殺人マシーンとなった、少年兵士の Moses、
新薬の開発には多大な費用がかかるため、製薬会社は、収益の出ない薬を生産する必要はないとかたくなに信じ込み、多くの人の命が失われることを知りつつ、ronitine 生産をストップする事を厭わない製薬会社の幹部、Richard、
薬物中毒で、エイズキャリアの娘を持ち、製薬会社の方針に、良心の咎めを感じている、製薬会社の管理職の Gilles、
何不自由のない幸せな家庭に生まれたのに、薬の奴隷となり、良心と分別をなくしてしまった Gilles の長女 Karine、
命を救うことの出来る薬が存在するのに、ただ、貧しい国に生まれたというだけで、苦しみながら死んでいかなければならない人々、
フランスに滞在する権利を得るために、お金を払って、自らの血管へエイズ菌に感染した血液を注射する人たち、
そんな多様な人々の生き様を描きながら、現在の先進国と発展途上国の関係にメスを入れた問題作。
アフリカでの非営利団体の活動を通し、アフリカのエイズ患者の想像を絶するような暮らしぶりや、先進国には、知られていない「眠り病」という恐ろしい病の存在を浮き彫りにし、著者は、そうした現実に対し、先進国が果たさねばならない役割とは何か、を読者へ問いかけます。
絶妙な作中人物のキャラクター設定、真に迫って、迫力のある心理描写、さらっとしていて、時にはユーモアすら感じさせる軽快な語り口、 読者の気を最後までそらせない、優れた作品構成、心の底へ波紋を投げかけるラスト・・・
等などの、優れた要素が、満載されたこの作品は、世界的規模で描かれた社会派サスペンス小説の傑作といっても遜色はないと思います。
この本を読んだ後、世界的な規模で考えたとき、自分がどのような立場に置かれているのかを、改めて考え直すことを余儀なくされました。 そんな、読む人の人生観、世界観を揺るがしてしまう力のある小説です。
重いテーマを扱っているのですが、あくまでエンターテイメントとして書かれているため、快適な読み心地を満喫することが出来ました。
そんな読み応えタップリで、快適な読み心地の小説なので、是非、日本にも紹介してもらいたい一冊です。
【こんな人にお勧め】
【きわめて個人的な本の評価】
【関連記事】
【外部リンク】
2010年6月6日に一部加筆修正。 2012年4月5日にレイアウト修正。
本の種類 : ソフトカバー(14x2x22)
ページ数 : 240頁
主人公の Abe こと、 Ablaram Van Tang は、ラオスで、ラオス人の母親とアメリカ空軍のユダヤ系軍人との間に生まれた。
父親は戦死し、Abe が5歳の時、彼を背負った母親が、アメリカ軍の置き土産の地雷を踏んで死亡した。 Abe は、運良く命を免れたれたが、地雷のせいで右手の親指と人差し指を失った。
その後、Abe は、タイの難民キャンプから、フランス領ギニアへ渡り、そこで、頭の良さを見込まれ、奨学金を受け学業を続け、医者になり、現在は、GSF(Gnérir Sans Frontièrs)という非営利団体のメンバーとして働いている。
Abe は、Ouganda で、行方不明になった医師の捜索のため、Ouganda にやって来る。 ところが、Abe は、Ouganda のGSF支部で働いているスタッフから、逆に、現在アフリカで多くの死者を出している「眠り病」に効く 『rostine』 という薬を積んだまま行方を絶ったトラックを探してくれと、頼まれる。
フランスの薬品会社は、採算が合わないという理由から、 アフリカに蔓延する「眠り病」という病を唯一治療することの出来る『rostine』 の生産を打ち切ることに決定したため、この病に罹っている人々を救うためには、どうしても、この薬品を入手しなければならなかったのだ。
パリのGSFのスタッフ Joséphine は、『rostine』 の採算を再開させようと、製薬会社に働きかけるが、企業幹部は、生産の再開をかたくなに拒否する。
やがて、ゲリラの襲撃にあい、ぼろぼろになったトラックが見つかる。
GSFが、『rostine』 を見つけたものに、千ドル賞金を出すことを発表すると、トラック運転手達の首と ronitine が入ったダンボールが、10万ドルの身代金を請求する手紙と共にGSFの事務所へ届けられる。
ちびで、片手の指が半分ないけれど、妙に女心をくすぐる、アジア人と白人のハーフの主人公を中心に、
子供の養育権を元夫に取られた、世界を駆け巡るバリバリのキャリアウーマンの Joséphine、
両親を目の前で惨殺したゲリラの一員となる事を強制され、生き残るために、殺人マシーンとなった、少年兵士の Moses、
新薬の開発には多大な費用がかかるため、製薬会社は、収益の出ない薬を生産する必要はないとかたくなに信じ込み、多くの人の命が失われることを知りつつ、ronitine 生産をストップする事を厭わない製薬会社の幹部、Richard、
薬物中毒で、エイズキャリアの娘を持ち、製薬会社の方針に、良心の咎めを感じている、製薬会社の管理職の Gilles、
何不自由のない幸せな家庭に生まれたのに、薬の奴隷となり、良心と分別をなくしてしまった Gilles の長女 Karine、
命を救うことの出来る薬が存在するのに、ただ、貧しい国に生まれたというだけで、苦しみながら死んでいかなければならない人々、
フランスに滞在する権利を得るために、お金を払って、自らの血管へエイズ菌に感染した血液を注射する人たち、
そんな多様な人々の生き様を描きながら、現在の先進国と発展途上国の関係にメスを入れた問題作。
アフリカでの非営利団体の活動を通し、アフリカのエイズ患者の想像を絶するような暮らしぶりや、先進国には、知られていない「眠り病」という恐ろしい病の存在を浮き彫りにし、著者は、そうした現実に対し、先進国が果たさねばならない役割とは何か、を読者へ問いかけます。
絶妙な作中人物のキャラクター設定、真に迫って、迫力のある心理描写、さらっとしていて、時にはユーモアすら感じさせる軽快な語り口、 読者の気を最後までそらせない、優れた作品構成、心の底へ波紋を投げかけるラスト・・・
等などの、優れた要素が、満載されたこの作品は、世界的規模で描かれた社会派サスペンス小説の傑作といっても遜色はないと思います。
この本を読んだ後、世界的な規模で考えたとき、自分がどのような立場に置かれているのかを、改めて考え直すことを余儀なくされました。 そんな、読む人の人生観、世界観を揺るがしてしまう力のある小説です。
重いテーマを扱っているのですが、あくまでエンターテイメントとして書かれているため、快適な読み心地を満喫することが出来ました。
そんな読み応えタップリで、快適な読み心地の小説なので、是非、日本にも紹介してもらいたい一冊です。
【こんな人にお勧め】
国際・社会派サスペンスを読みたい方。 先進国と第3世界の関係を考えてみたい方。 多読用。
【きわめて個人的な本の評価】
作品評価 : 5/5
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
フランス語難易度 : 3/5(易<難)
読みごこち : 4/5(難<易)
【関連記事】
【外部リンク】
2010年6月6日に一部加筆修正。 2012年4月5日にレイアウト修正。
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